よろしくお願いします。
リスナーとしては新譜や新しいムーブメントをフォローしていくことが難しくなっていることを感じます。しかしながら、これは個人的な老いと同時に、「中心の不在」ということがあるのではないのでしょうか。EDM? アイドル? J-Rock? 「フリースタイルダンジョン」? もしかしたら「Apple Music」? いやいや、どれも違うような気がします。中心が不在のまま音楽シーンはどうなるのか。再び求心力の強いムーブメントが生まれるのか、それとも細分化/クラスタ化がさらに進むのか。キーワードは「ルミネセンス」(再放出)。出し尽くされたあとで、再び輝く音楽に魅力を感じると思いますし、自分らのようなリスナーにとってみれば、その輝きのために「磨く」ような活動が楽しみになるのかもしれません。

ちなみに、1〜10枚目は順位に優劣ありません。

1枚目 amiina / Canvas

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 2015年のアンセム。高揚感、多幸感、ポップスが生みだす力をもっとも伝えてくれたのはamiinaであり、この曲でした。「マインドトラベル」「drop」「monochrome」とポストロックの空気を大きく吸い込んだ名曲固め打ちでアイドルポップスに新たな地平を切り拓いたamiina。この1枚によって、さらなるステージに踏み込みました。柔らかな歌声で楽曲に優しさを与えていたかわいみいなさんの脱退は非常に残念ですが、「あみとみいなでamiina」の貴重な記録としても大切な1枚になりました。

2枚目 透明な色 / 乃木坂46

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 48グループの総大将たるAKB48はついに今年、インパクトのある1曲を生み出すことができませんでした。(もっとも、そんな曲はとうの昔になくなってしまったわけで、閉塞感あふれる日本のポップシーンのなかで、「恋チュン」を生み出したエネルギーは計り知れないのですが)AKBがピークを過ぎ、どうなるかの先行きにいよいよ不安が立ち込めたことが衆目に晒された2015年。そんななかでグループアイドル戦線の先頭に出たのが乃木坂46。そんな彼女らのこれまでのキャリアをまとめるかのような1枚です。本家AKBと比べても穏やかで、清涼感のある楽曲は、退屈かもしれませんが、彼女らが広い世代に愛される可能性も感じさせました。しかしながら、「君の名は希望」という越えられない壁がすでに存在すること。保守的すぎる運営の方針など、乃木坂46の限界も予見させる1枚。

写真は収録曲が一番多い初回限定B盤より。

3枚目 3776 / 3776を聴かない理由があるとすれば

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 2015年の鬼っ子。どんなロックバンドよりもロックで、プログレッシヴで、予測不能で、ふてぶてしく、音楽に対して敬虔で、純粋。アイドルポップスはショウであり、エンターテインメントであるが、同時にアートになり得るという可能性しかない1枚。とにかく2015年もっとも聴かれるべき1枚。

4枚目 Jim O'Rouke / Simple Songs

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 いつも通りのジム・オルーク。アコースティックギターと、闇の向こうに見えるほのかな灯りのようなうた。彼のキャリアを無視すれば、弾き語りシンガーソングライターと言ってしまうこともできるかもしれません。しかし、世にあふれる彼/彼女らの音楽とはまったく似ていないのは、ルーツミュージックへの愛と、音色へのこだわりの深さでしょうか。かの名盤「Eureka」と比べてどうこう、というまでもなく、長く付き合うだろう1枚。

5枚目 Negicco / Rice & Snow

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 ねぎっこ、というファニーな名前と裏腹に、シリアスな歴史を抱え、心弾むポップスを歌うNegicco。ネガティヴ・ガールだったこれまでを振り切って、文句無しの名盤になりました。この嗜好の細分化が進み、ありとあらゆるジャンルが孤島化し、交流が途絶えてく現代において、圧倒的に敵を作らないNegiccoのキャラクターこそが、現代のポップなのかとも思いますし、connieさんという優秀な作曲家がいながら、多くの人材を起用するのも、決まった色をつけない=敵を作らないための方法かもしれません。そして、このすばらしいポップスができあがっているのですから、その方法は大成功と言うしかないでしょう。

6枚目 Tweedees / The sound sounds

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 Cymbalsのリーダー、ベーシスト、メインコンポーザーだった沖井礼二が、女優としても輝かしいキャリアをもつ清浦夏実と組んだユニット。Cymbals時代から、疾走感とセンスあふれる曲作りとちょっといじわるな歌詞のセンスはすばらしいものがありました。その楽曲が、清浦さんのたおやかで柔らかさのある声と組み合わせることで、できあがる世界は、まさにプロ! 最高にキラキラしていて、最高にうっとりできる至高の体験。しっかり聴き込めばその構造の緻密さに驚かされますし、BGMにしても、なんでもない日常を輝かせてくれます。ベテランの職人が生み出す技にグッとくるのも音楽のすばらしさ。

7枚目 I-POP / 武藤彩未

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 2015年の12月、ソロアイドル武藤彩未は、無期限の活動休止を宣言しました。
それは、いつかのカムバック宣言ともセットだったわけですが、2016年に彼女はいないことの重さをこれから僕らは味わうのでしょう。今はこの模索と探求の1枚を聞き返すことしかできません。アイドルに誰よりも真摯に、希望をもち、求道的だった武藤彩未。東京以外の単独ライヴもついに実現しませんでした。「Owari wa hajimari」という直球のメッセージよりも、「パラレルワールド」に彼女がいるような錯覚こそが愛おしい。愛おしかったのになぁ・・・という1枚。

8枚目 溶けない名前 / タイムマシンがこわれるまえに

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 詳しくは過去の記事を参照していただけると嬉しいのですが…。名古屋在住ですので、名古屋の1枚を。名古屋の現況を伝える名コンピ「753812」(ナゴミハイツ)も、10年越しの北欧エレクトロニカへの返歌 miiia / ひみつのおはなし も大変好みの1枚でしたが、溶けない名前の1枚を。名古屋以外の地域での露出もかなりありましたし、レコ発ライヴでも名古屋以外のバンドへのアプローチも積極的で、2015年の名古屋代表はとりあえず彼らでいいかなと思います。多くの異論もあるかと思いますが、それこそ、中心の不在という音楽シーンの現況を端的に表しているのかもしれません。

9枚目 はじまりのうた / オリジナルサウンドトラック

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 映画「はじまりのうた」のサウンドトラック。この映画を見ながら「音楽っていいな」と何度思ったことでしょう。セリフの節々、演奏シーンの見せ方、微笑みながら泣きました。いろいろありましたが、2015年、音楽の力を信じようって気になれる映画でした。そんな映画のサウンドトラックならば、もちろん最高。全曲名曲。グッドメロディにまた涙すること間違いなしです。映画のDVDも出ていますし、各地でのリバイバル上映もされている様子です。年末年始の一本に是非。

10枚目 Black Messiah / D’Angelo

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 今年、話題になった1枚でもありますが、今年、もっとも消化しきれない1枚でもあったのではないのでしょうか。ビートが揺れ、伸縮する。そして、グルーヴの1点にすべてが集約されてく。消化不良になるんだけど、くせになる。黒い救世主を、ただ崇め奉るのみ。2016年3月に再来日が決定しました。みなさま、グルーヴへの感謝と信仰を忘れず、礼拝の日を待ちましょう。



 次点として、新譜もトリビュートも快作だった坂本真綾、循環していくことで強くなっていくさくら学院、インドネシアでのブレイクに現実味が高まるFaint Starを挙げておきたいと思います。

 音楽の喜びが「ルネッサンス」される2016年になることを願って。よいお年を。

サッタ