■「渋谷ジョーク」に込められた真意


高岩「これが最後の投げ銭になります」
岩間「もう投げたくても投げれません」 
 
 その言葉を聞いた時、今日のこのステージは10月のあの夜と繋がっていたのだと確信した。約2年半にも及ぶSANABAGUN.の路上時代が、今夜この渋谷クワトロのステージで本当に終幕を迎えたのだ。
 
 SANABAGUN.のデビューアルバム『メジャー』そのリリースパーティ最終公演が、12/16渋谷クワトロで開催された。前売り券は378(サナバ)円と言う彼ららしい冗談を交えた値段設定もあってか早々に完売。当日券はその10倍の3780円で10枚売り出されたが、こちらも即完売したという。その証拠に会場には開演前から賑やかにひしめき合い、時間が迫るにつれ期待が会場を満たしていくようだった。
 開演時間を暫し回って会場の照明が落とされる。ステージ袖の奥から、咆哮のあとに勢い込むような「SANABAGUN.だ味わえ!」という声が聞え期待が一気に膨らんだ。粛々と黒いスーツに身を包んだメンバーがステージに登場し、最後に高岩と岩間のフロントマン二人がゆっくりと中央に立つ。
 
「俺らがレペゼンゆとり教育」
「平成生まれのHIPHOPチーム」
「これが」
「SANABAGUN.だ味わえー!!」
 
 高岩がSANABAGUN.のハンドサインを示した瞬間に、照明が弾けるように会場を照らした。路上も含めて何度も見ている瞬間なのに体が動かなくなった。まるで出会い頭に花束を突きつけられたかのような衝撃。
 その緊張感は『カネー』『Hsu What』『M.S』と続いた。ジャズの色が強い心地よい楽曲たちに耳を任せ、ただ一心にステージをひたすら見つめていた。耳目を集めるのに必要なのは大声や派手なパフォーマンスだけではないと知っているのだと、必要以上にゆっくりと余韻を含ませて動く高岩遼を見ていると思う。

 そんな雰囲気は『J・S・P』で一気に解かれた。岩間にクラップを煽られると緊張感から解放されて、自分も会場の空気もぐっと上昇していくのがよくわかる。
 「みんな! 見てくれよ!。俺たちのためにこんなにたくさんの人が集まってくれたんだぞ! 」という岩間の言葉を受けて、わざとらしい喜びの演技をするメンバー一同が会場の笑いを誘う。そして『人間』のイントロが流れ、更に盛り上がりを増した頃合で二人組の警察官が登場。「路上ライブは禁止ー!!」「えっ、110番ですか?」などと絶妙なリアリティを醸し出す会話をしながら高岩と岩間を連れて行ってしまう。と、そこに置かれたマイクを掴んだのはsaxの谷本大河。まさか!?という期待通りに谷本がボーカルをとる「胆管処刑」が披露され、レアなステージに会場の興奮はさらに高まった。
 
 連行されていた二人が戻り、ギターの隅垣元佐が加わって3MICで『デパ地下』、続いて『在日日本人』『まさに今、この瞬間』と続く。『まさに今、この瞬間』では高岩遼の本領発揮、ジャズボーカルを思い切り堪能できた。天井に吸い込まれていくようなボーカルと対照的に、顎先から汗が床に零れ吸い込まれていく。
 
 ここでまた岩間によるさっきの「みんな! 見てくれよ!俺たちのためにこんなにたくさんの人が集まってくれたんだぞ! 」が始まり、やっとか!という期待満開の空気もまた警察官の再度の登場により阻まれるのであった。
 
 連行された高岩を見送り、残された岩間のリードにより『大渋滞』。耳に心地よく響くRAPと全力の「渋谷!」「ジョーク!」のコール&レスポンスにより会場の熱気は更に高まる。この煽り方は、客席を掌握する力は流石といわざるを得ない。それを更なる高みへ連れて行くような『居酒屋JAZZ』の、ホーン隊が奏でる賑やかなイントロの「待ってました!!」感はかなりのものだった。この曲がこのバンドの代表曲なのかと肌で感じる熱があった。
 「次の曲は俺らが渋谷の路上からここにのし上がるまでのストーリー」との高岩の言葉を受けての『HIS MASTERS VOICE』。そして三度目の「みんな! 見てくれよ! 俺たちのためにこんなにたくさんの人が集まってくれたよ!」という岩間の台詞から最後の曲『人間』と繋がり、「トイレットペーパーでおしりをさあ拭いて 重い腰をあげてさあ布団へ帰ろうぜ!」と会場を巻き込んでのコール&レスポンス。岩間が「踊れー!!」とジャンプを煽り、最高潮のボルテージで本編は終了した。

 アンコールを待つ手拍子の中、スクリーンから「2016年4月メジャー2ndアルバム発売」という予告映像が流れ、ファンからの期待が歓声と拍手となって会場を包んだ。

 スーツから今回会場で販売されていたフーディに着替えてメンバーが登場。全員がマイクを取る「もう実家帰りなよ」を披露。普段マイクを取らない楽器隊のRAPに観客も更に沸く。

 高岩は「ここに集まったみんな、ひとつだけ言わせてくれ。俺たちは路上ミュージシャンじゃねえんだよ。俺たちは俺たちの策略で渋谷の路上に飛び込んだ。俺たちのマジな目標を教えてやろうか?NFLハーフタイムショーだ」と高らかに宣言。会場の反応に今ひとつ不満げに混ぜっ返しつつ、岩間のその場の勢い全開のグッズ紹介に続き、高岩により木の樽がステージに持ち込まれる。
 

高岩「これが最後の投げ銭になります」
岩間「もう投げたくても投げれません」 
 

 ここで冒頭に戻るが、この言葉を聞いて一瞬であの10月の渋谷の路上に戻された。SANABAGUN.路上ライブ最後の夜。「路上をやめないでほしいと沢山いわれた。でもそれは、俺らにごみを食えって言ってるようなもの」そう吐き出した岩間の言葉の重みを思い出す。
 そう、今日のこのステージは10月のあの夜と繋がっていたのだ。約2年半にも及ぶSANABAGUN.の路上時代が、今夜この渋谷クワトロのステージで本当の本当に終幕を迎えたのだ。自分たちのステージの値段を観客に委ねる時代はもう終わり。これからは自分たちがステージに値段をつけて提示し、客に選んでもらう。378円というバカみたいなチケット代が「渋谷ジョーク」なのではない。このステージで本当にひとつの段階の終わりを宣言したこと、これが彼らたちなりの「ジョーク」だったんだと悟った。

 アンコールは新曲『板ガムーブメント』を披露。ステージからフロントマン二人が板ガムをばら撒いて熱狂を煽る。続く『WARNING』で終わりかと思いきや、長い長いおじぎを経て鳴り止まない拍手の中、まさかのWアンコールとして『まずは、「墓」。』で締めくくり、この最高に胸を熱くさせた一夜は幕を閉じた。

 顔をあげステージを去るメンバーは、本当に晴れ晴れとしたいい表情を浮かべていた。きっと、それを見送った観客も同じ顔をしていただろう。どうかその光景が、彼らの目にも焼きついているといいなと思った。 
 
 SANABAGUN.はJAZZ/HIPHOPバンドだと思っていたけど違った。もっと広い意味でのエンターテイメント集団を目指しているのではないだろうか。ホーン隊も居てサウンド的にも華やかなだけでなく、全体を通して緩急がしっかりしている。フロントマンの二人だけでなく、楽器チームにも演奏に併せてダンスをさせたりするなどし、一体感を演出する。それが耳だけでなく目からも楽しませてくれることに繋がっている。今はまだ本人たちの意図と観客の反応が噛み合わないところもあるだろう。しかしこの歯車が噛み合ったら凄いことになるのではないか。希望・課題・期待・のびしろ・余白…このひとつのステージで沢山の要素が見えて、最後にはこのバンドに対する「絶対にもっと大きなステージに立つ集団になる」という確信を抱えて帰途につくことが出来た。居合わせた誰にとっても間違いなく幸せな夜だった。

《セットリスト》
01. SANABAGUN.Theme
02. カネー
03. Hsu What
04. M.S
05. J・S・P
06. 胆菅処刑
07. デパ地下
08. 在日日本人
09. まさに今、この瞬間。
10. 大渋滞
11. 居酒屋JAZZ
12. HIS MASTERS VOICE
13. 人間
 
<アンコール>
14. もう実家帰りなよ
15. 板ガム―ヴメント
16. WARNING

17. まずは「墓」。
 


SANABAGUN.最後の路上ライブのレポートも、当サイトで記事をあげています。
もしよければこちらも併せて目を通していただければ幸いです。


【ライブレポート】10/19SANABAGUN.「さようなら渋谷コンクリート」@渋谷路上
■SANABAGUN. 渋谷路上LASTライブ 完全レポート!あの日、渋谷でなにが起きていたか。



SANABAGUN.オフィシャルサイト
http://sanabagun.jp/

(文:ユリ)