lyrical school 『SPOT』

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("ゆめであいたいね"MVのナカG氏( @nakagoodchance )のイラストより)


■明日も続くlyrical school days


 タワーレコードが設立したアイドル専門レーベル、T-palette Recordsに所属する6人組ヒップホップアイドルユニットlyrical school(通称リリスク)。 昨年10月にリリースしたシングル"PRIDE"ではオリコン総合ウィークリーチャート9位を獲得し、その後行われた恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブもソールドアウトさせた。そんな彼女達の前作『date course』から約1年半振りとなる彼女達の2枚目のアルバム、『SPOT』が3月10日にリリースされた。


公式サイトでは今回のアルバムのコンセプトは下記のように説明されている。


「アルバムの前半ではシングル曲をはじめ、勢いのある楽曲で華やかなステージ上でのlyrical schoolを描き出し、後半ではステージを降り、普通の女の子に戻ったありのままのlyrical schoolのメンバーを表現した1枚となりました。」(参照:http://lyricalschool.com/?p=2888


上記の説明にもあるように、今回のアルバムの主人公は他でもない「lyrical school」本人達だ。


そしてアルバム全体の構成は、途中に挟まれるskit、"-4 years-"、"-8 p.m.-"を境目に大きく3つに分かれている。

"I.D.O.L.R.A.P"、"PRIDE"、"OMG"によるHIPHOPマナーに沿った《ハードコアセクション》

"FRESH!!!"、"レンボーディスコ"、"brand new day"による《パーティーラップ・ポップセクション》

"CAR"、"月下美人"、"ゆめであいたいね"、"わらって.net"による《メロウ・チルアウトセクション》
("S.T.A.G.E take2"はあくまでも位置づけはボーナストラック。)


そして、今作でまず打ち出されたのは前半の3曲に代表される"かっこいいlyrical school"だ。


前作のシングル"PRIDE"で見せた「アイドルラップの先駆者」としての自分たちの矜持。
そして今作のリードトラックとして冒頭"I.D.O.L.R.A.P"のPVが先行公開され、その矜持がより確固たるものとして提示されている。また、"PRIDE"に続く"OMG"でも「We areオリジネーター」と、lyrical schoolが唯一無二のヒップホップアイドルであることを歌っている。


トラックも重厚でシリアス、歌詞も聴くものをアジテートするような自信と決意に溢れ、メロディよりもラップのライミングやフロウで押していく楽曲が並んでいる。


ライブやリリースイベントでもこの3曲はアルバムのリリース前から披露され、時にはインストアライブのセットリストの5曲のうち3曲が上記のハードコア路線の楽曲で固められる日も少なくなかった。

それはこれまでの"lyrical school"のパブリックイメージである「パーティ」「女の子」「恋」「日常」といったワードとは(『PRIDE』のリリースはあったにせよ)明確に異なるものだ。


そしてこの3曲がアルバム『SPOT』のイメージとして先行した結果、賛否両論が巻き起こった。


新しいリリスクの一面に胸を躍らせる従来のファンの期待を煽り、またコアなサウンドとスタイルを嗜好する新規のファンを獲得していく一方で、これまでのリリスクが好きなファンには方向転換ともとれる楽曲の変化に戸惑いを感じる者もいた。


だが、この前述のハードコア路線は「変化」ではなくあくまでも「成長」の一旦だ。


結成5年目を迎え、幾多のライブと大舞台を乗り越えて来た彼女達は各々のラップのスキルも向上し、表現できる幅も広がった。1年前はできなかったかもしれない。しかし、"PRIDE"のチャートアクションとリキッドルームの成功も自信に繋がっただろう。今だからこそ、こうした楽曲に胸を張って挑戦できるのだ。

同じことを繰り返すばかりではいずれ停滞してしまう。新しい、難易度の高い楽曲に挑戦することは彼女達自身の引き出しを更に増やし、ライブにも新しい華を添えてくれる。それはゼロから作り直すものではなく、これまで築き上げてものの上に積み重ねられるものだ。

そうしてミルフィーユのように幾層もの魅力が重なってできあがるものが、最新のlyrical schoolだ。
そのため、今回のアルバムを一聴して彼女達が変わった、路線変更をしたと判断するのは早計だ。



何より、このアルバムが本当に物語っているものは、8曲目の"-8 p.m.-"以降にある。



そもそも、本来ならばアイドルが見せるのは"アイドル"であるステージ上の姿だけで良いはずだ。

 

このアルバムならば3曲目の"OMG"までであり、あるいは7曲目の"brand new day"までで、
"アイドル"としてのlyrical schoolは完結するはずである。


ステージの上でスポットライトを浴び、キラキラと光り、溢れんばかりのその輝きで見る者を魅了し、心を照らす。一時でも現実を忘れさせてくれ、ファンはその瞬間にそれぞれが持ち帰った勇気や笑顔を胸に、また現実を生きていく。


"アイドル"がファンに見せるのはそうした〈表〉の姿であるはずだ。


けれどこの『SPOT』では、ステージを降りた後の彼女たちの〈裏〉の姿までもが描かれている。


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帰ろう Myhome また逢えるから大丈夫 / 
明日も続くlyrical school days 
(CAR)


ひとりぼっちの帰り道は音楽にいつも守られてる / 
迫りくる あしたの現実に立ち向かうための休息を
(月下美人)


あったかくしておやすみなさい
あなたのことおもってるよ / 
今日はおやすみ
ゆめであいたいね
(ゆめであいたいね)

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ここでは舞台を降り、日常に戻っていくアイドルとしての、一人の女の子としての彼女たちの世界が広がっている。
しかしそれは同じように、楽しい時間を終え、再び日々の生活へと帰っていく僕らに向けて歌われているかのようだ。



以前、『PRIDE』のディスクレビューを書いた際
http://blog.livedoor.jp/musicoholic/archives/54998608.html
にも書いたが、彼女達の曲で描かれる世界はたわいもない半径5mの中の日常だ。


別に「夢」や「希望」を歌っているわけではない。
「この先のどこか」にある「約束の場所」を歌っているわけでもない。


ただ 彼女達は


「こんど会ったら駅のホームで なんか話をしようね」
そう言って、そばにいてくれる存在だ。


アルバムタイトルである『SPOT』は「光が刺す場所 / 光の当たる場所」という意味を持つ。


目映い太陽の光だけが 世界を照らしているわけではない
静かな月の光だって 心細い夜道を照らしてくれている


それは 勇気や笑顔をくれるだけの音楽ではない
それは 日常に寄り添って 日々を一緒に生きてくれる音楽だ


パーティはいつか終わる
でも人生は続いてゆく


楽しい時間が終われば 僕らは家路につく
朝目が覚めれば またそれぞれの生活が待っている

繰り返されてるだけのような毎日 変わり映えのない日常
こびりつく未来への漠然とした不安を心の片隅に追いやっても 時間は無情に流れてゆく

物事が手に付かなくなるような楽しいことや悲しいことがあるわけでもない
人生を変えるような大きな決断や挫折と 常に向き合っているわけでもない

ただ毎日、ほんの些細なことで
嬉しくなったり、ワクワクしたりする

ただ毎日、ちょっとしたボタンの掛け違いで
落ち込んだり、切なくなったりしてる


そういった日々の中に潜む機微を 見慣れた景色の狭間に芽吹いた感情を
当たり前のように続く毎日に散りばめられた尊さを 彼女達はずっと歌ってきた


そして後半の4曲、物語の主人公が彼女達自身である『SPOT』というアルバムの中でも、
ステージを降りた彼女達は変わらず、聴く者の日常に寄り添ってくれる

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炎上している世界も
落書きみたいな世界も
こんなちっぽけなわたしが
幸せにすると考えてる

わらって わらってってば お願いだから
きみの笑顔がみたくてここまできてるんだよ
(わらって.net)

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また、このアルバムを構成する3つのセクション


ヒップホップアイドルとして、"ステージ"上でより強度と輝きを増すための《ハードコアセクション》

これまでのリリスクの延長線上にある、日常と地続きの非日常を歌う《パーティーラップ・ポップセクション》

聴く者の毎日と、想いに寄り添う《メロウ・チルアウトセクション》


それは最初に挙げた
「アルバムの前半ではシングル曲をはじめ、勢いのある楽曲で華やかなステージ上でのlyrical schoolを描き出し、後半ではステージを降り、普通の女の子に戻ったありのままのlyrical schoolのメンバーを表現した1枚となりました。」

というこのアルバムのコンセプトだけでなく、

「lyrical schoolのステージを見て勇気と笑顔をもらうだけでなく、ステージを離れた後のそれぞれの日常の中でも、いつもリリスクの音楽がそばにある彼女達とファンの関係性」をも表している。


今作『SPOT』は、誰かの人生のサウンドトラックになれるリリスクの音楽性を象徴する1枚だ。


もちろん、これから先、彼女達がどうなるかはわからない


前述したハードコアな路線を突き詰めてゆくかもしれないし、全く新しい道を開拓してゆくかもしれない。誰も先人のいないヒップホップアイドルという道がどこに続いているか、答えは誰にもわからない。


でも、彼女達がどんな音楽を歌おうと これだけは言える


lyrical schoolは 人生を共に歩んでくれるアイドルだ


それだけは きっと変わらない


いつの日か リリスクにも終わりがくるかもしれない


それでも その日が来た後だって 彼女達の音楽は ずっとそばにいてくれるだろう


きっと相変わらず大したことのない毎日だろうけど 
その当たり前の素晴らしさを 気づかせてくれるはずだ


でも、その日が来るのはまだもうちょっと先の話だろうから
今はまだ 変わらない日常を生きよう 



2015年7月25日(土)



Zepp Divercityでまた会いましょう






p.s 4月19日に埼玉県、大宮ステラタウン(最寄駅は土呂駅)にてメンバーmeiの24歳の生誕祭が行われる。ステラタウンはリリスクの聖地と言われていて、ただのインストアイベントなのに、愛がないととてもじゃないと出来ないような手の込んだ装飾を毎回作ってくれ、メンバーもこの場所は特別と感じていて、ただのインストアのはずなのに、不思議な空間になることが沢山ある。更にこの日はmeiが作詞した曲を披露する予定にもなっている。とにかく、今この文章を読んでくれて、ここまで付き合ってくれているような酔狂な人にはお願いしたい。



来てみてくれ!!!!



来てくれて、その後に何か感じてもらえたのなら、
それはここでしか見つけられないもののはずだから

自分以外の誰かの幸せをお祝いするのも
誰かが幸せになっているのを見て、幸せを感じている人を見るのも
思ってるより ずっとずっと 悪くないものだから

他にも色々書くつもりだったけれど、
言いたいことはとにかく、これだけだった

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君にも書いたよ招待状


来て!


ずっと探していたものが


きっと見つかるから



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(文・カヲル)