musicoholic presents『This song vol.3』@下北沢モナレコード
act: MC KOSHI(O.A)、SANABAGUN、仮谷せいら、GOMESS

2014-12-15-07-14-15

















■20150215


 2月15日、musicoholic3度目となる自主企画『This song vol.3』が下北沢モナレコードにて行われた。『This song』とはmusicoholicのメンバーであるヤットが中心となり「今、この音楽を聴いてほしい!」という想いをもとに、ジャンルやシーンを問わず、ライブを生で見て欲しいというアーティストを招いて行うイベントである。
 2012年10月にONPA MOUNTAIN、BRADIO、barbalip、With A Splash、ill hiss cloverを呼んで池袋マンホールにて開催された第1回、2014年6月にShiggy Jr.、HOLIDAYS OF SEVENTEEN、R (from FAT PROP)の3組が、アコースティックセットで下北沢モナレコードに集った第2回を経て、今回で3度目の開催となった。


 まず一組目、オープニングアクトとして登場したのは、HIPHOPアイドルグループlyrical schoolのバックDJや作詞で活躍する岩渕竜也ことMC KOSHI。 過去にラッパーとしても活動していたが、本人曰くライブをするのは3年振りとのこと。何度かlyrical schoolのイベントではフリースタイルを披露し、自身のsoundcloudには音源を上げていたが、おそらくほとんどの人にとってそのライブはベールに包まれたものだったろう。
 そんな中1曲目に歌われたのは"そういう男に"。イベント前夜にYouTubeの彼のアカウントにリハスタでの映像が突如アップされた楽曲だ。これまでlyrical schoolに提供してきた彼の歌詞は、あくまで女性(アイドル)が歌うことを考えて作られた「男性の考える女性目線の歌詞」だった。しかし、この曲では「辛い悩みから決して逃げない 深い闇から目を逸らさない」と、彼の内面を反映させたような男性目線の硬派なリリックが、決意表明のように力強く歌われている。
 その後も「昨日はバレンタインデーだったので」と歌われたメロウなラブソング"君のせい”など、ゆったりとしたトラックと堅実なライミングを披露、初見でまだ固かった観客も次第に音に身を任せ揺れ始める。"リクルート"では、自身の就職活動とHIPHOPの道に進むきっかけとなった瞬間をメロディアスにラップした。その曲の最後、バックDJの浅野(lyrical schoolスタッフ)が次の曲への繋ぎを失敗してしまうハプニングもあったが、「いいんだぜ間違えたって。間違いながら何かに逆らうんだぜ。」と"リクルート"の歌詞を引用しながらすぐさまフリースタイルでフォローを入れる一幕も見られた。全6曲。短い時間ではあったが、岩渕竜也ではなく一人のラッパーとして、3年ぶりとなるMC KOSHのライブIはステージに華を添えた。

_MG_0017 のコピー
















MC KOSHI セットリスト
1. そういう男に
2. platinum days
3. 封筒
4. 君のせい(原曲:Midnight / https://soundcloud.com/koshi03/midnight )
5. リクルート
6. see you again 


 続いて登場したのはSANABAGUN。渋谷で毎週ストリートライブ(現在はお休み中)を行う8人組のジャズHIPHOPバンドだ。この日、saxの 谷本大河が入院治療中のため欠席となり7人でのステージとなったが、お馴染みのオープニングナンバー"Son of A Gun Theme"、"M・S"と続けた、その後は新曲をお披露目、ジャズシンガーの高岩遼の色気のあるボーカルの活きたブルージーな一曲にモナレコードの木目の温かい雰囲気がよく似合っていた。
 しかし、そんなムードある曲で聴かせたと思えば、次の"大渋滞"では縦ノリのタイトなリズムに乗せ、MCの岩間俊樹が「みんな金払って今日来てるんだろ?」とステージからフロアに降り客席を煽り立てる。かと思えば"Stuck In Traffic"では高岩が物販エリアまでやってき、ユーモアを交えながらグッズの売り子を始めだす(この日欠席していた谷本大河の生写真が通常は5000円?のところ300円で販売されていた)など、変幻自在のSANABAGUNペースで客席を掴んでいく。そして終盤"Hsu What"では再びジャジーな横揺れのグルーブで客席を魅了し、「メイクマニーしてる間に まず墓」という不思議なフレーズのコール&レスポンスと合掌の振り付けで観客を一つにする"まずは「墓」。"で本編トップバッターを締めてみせた。
 SANABAGUNは全員が平成生まれであり、自分達でも「レペゼンゆとり世代」を公言している。しかし、彼らはそれぞれ微妙に年齢も出身地も異なり、まだ若いながらも各々が別々の音楽活動を行っていた下積み時代も経験しているグループだ。その8人が今SANABAGUNとなり、ジャズやブルースとHIPHOPを巧みに折り合わせたグルーブと人を惹き付けるキャラクターで、渋谷のストリートから徐々に旋風を巻き起こしつつある。彼らのその確信犯的なシニカルさと即興性の高いエンターテイメント力のあるステージは、雨にも負けず、風にも負けず、警察にも負けず、ストリートでその場を通り過ぎていく人並相手に鍛え上げられた度胸と経験、そしてそれぞれの下積み時代に培われた技術に裏打ちされたものだ。それがストリートでも、ライブハウスでも、モナレコードでも、変わらないSANABAGUNのライブを支えている。
 この日はモナレコードという会場の雰囲気に合わせてか、持ち曲の中でも比較的BPMも抑えめの曲が多く、普段よりも「聴かせる」一面を見せてくれたが、どの場所でライブをしようとSANABAGUNはSANABAGUN。そんな確かな演奏力と変わらぬエンターテイメント性を感じさせるようなステージだった。

P1010928


















 SANABAGUN セットリスト
1. Son of A Gun Theme
2. M・S
3. 新曲
4. 新曲
5. 大渋滞
6. Stuck In Traffic
7. Hsu What
8. まずは「墓」。


 3組目に登場したのは仮谷せいら。この日のHIPHOP色の強い並びの中では、唯一、紅一点のポップスシンガー・ソングライターだ。彼女の真っすぐで伸びのある歌声と、彼女が描くその等身大の詩世界が、それまでのモナレコードの雰囲気をガラっと変える。"NMD"では「お金がないから 遊びに行けないね。外は晴れでも 誰にも会えずに。」とお金のないことが生む寂寥感を赤裸裸に綴っている。そんなありのままの彼女のメッセージは、きっと誰もが一度は体験したことのあるであろう普遍的な感情と重なり、聞く人を選ばずその心にすっと入りこみ、胸を包んでゆく。また、レーベルメイトのgive me walletsとのコラボソング"Yes,I Do."ではシンセポップをバックに全編英語詩を歌い上げ、「おそらく最初で最後」と彼女が作詞として参加したFaint★StarのEDMナンバー"メナイ"の自身によるカバーも披露するなど、ウェットや艶を感じさせる歌声も披露された。彼女が高校1年生の時に書いたという"大人になる前に"は、彼女が21歳となった今も、大人への階段を昇っている彼女の「今」の言葉として響き、聴く人の背中をそっと押してくれる。ステージの上で手拍子を煽る彼女の笑顔に、客席も自然と顔をほころばせる。最後はtofubeatsの1stアルバム『lost decade』に収録されている"SO WHAT!?"で爽やかな幸福感を残し、自身初の9曲となるロングセットのライブをやり遂げた。
 彼女の音楽を端的に表すのであれば「ポップス」という言葉になるのだろう。繊細な心の機微をストレートな歌声とシンプルな言葉で表現してゆく。しかし彼女の場合それはジャンルや音楽性だけではなく、彼女のステージでの笑顔、振る舞い、明るさや持って生まれた気質も「ポップス」として大きく作用しているのだろう。彼女のライブではファンは皆自然と笑顔になり、時にクラップし、体を揺らしながら、不思議な充足感に満ちたその空間に身を委ねる。まだ正式な音源化のなされていない曲も多いが("大人になる前に"と"SO WHAT!?"はiTunesで購入可能)、その音がリリースされた時、彼女の「ポップス」は更に広がってゆくだろう。現在音源を鋭意制作中とのことなので、その時を楽しみに待ちたい。

IMG_0636
















仮谷せいら セットリスト
1. HOPPER
2. NMD mix
3. Yes I Do
4. 心の中に...Avec Avec ver.
5. そばにいる
6. メナイ(original by Faint★Star)
7. フロアの隅で
8. 大人になる前に
9. SO WHAT!?


 そしてこの日のトリを飾ったのはGOMESS。仮谷せいらのライブで皆が朗らかな気持ちになっていた中、会場の照明も十分に点けぬまま「悪いけどおれに盛り上げる曲は1曲もねぇ」と、いきなり新曲の"箱庭"を披露。3月発売予定のニューアルバム『し』に収録予定のこの曲で歌われたのは、絶望と世界の終わりだった。更に「Twitterで不眠症の歌を作ってくださいと言われたので作りました。」と、こちらも新曲の"THE MOON"と続けざまに新曲を繰り出す。ポエトリーリーディングのようなスタイルで、時にまるで呻き声のように、GOMESSの口からは次々と言葉が吐き出されてく。不穏で、物悲しく、退廃的だが、その嘘のない言葉の欠片は、聴く者の心に少しずつ突き刺さってゆく。それは曲間のMCでも変わらず、フリースタイルでGOMESSはずっと言葉を紡ぎ続ける。そして次の曲は、リハーサルの段階では本来別の曲をプレイする予定だったのだが、「今日リリスクの"brand new day"をやるつもりだったんだけど、フックを歌って絶望したから...今日はやらない。」とGOMESSが話したのを機に、観客からは"brand new day"への熱いリクエストが飛ぶ。それを受け急遽その場でセットリストを変更し、lyrical schoolの"brand new day"のカバーを披露。しかしカバーと言ってもヴァースは全てGOMESSのオリジナルであり、そこでは「HIPHOP」というものに対するGOMESSの想いと信念が歌われた。「アイドルラップって言葉が嫌いだ。ジャンルって言葉が嫌いだ。壁を作った日本人が嫌いだ。おれはGOMESSというジャンルだ。」と「HIPHOP」に救われたからこそ抱く「HIPHOP」への憤りや葛藤を、GOMESSはステージの上でラップする。
 その後もGOMESSと同じLOW HIGH WHO?のレーベルメイトである黒柳鉄男を招いての"アイドルオタクライミング”、「地獄はまだ続くぜ」と自虐的なMCの後には、ライムベリーの"IN THE HOUSE"のGOMESS ver.、現在Maison book girlをプロデュースするサクライケンタ作曲の、まだ未発売の『世界の終わりのいずこねこ』のサウンドトラックに乗せてのフリースタイルなど、普段のセットリストでは滅多に見られない曲が続いた。ただそのためか、MCのまとまりがなくなってしまったり、少しグダついてしまうシーンの見られる曲もあった。
 しかし、彼は言う。「皆さんに言いますよ。2015年今日が一番かっこいいライブです。」GOMESSがHIPHOPのライブで好きな場面はラッパーがリリックを飛ばすシーンだそうだ。歌詞を飛ばしたラッパーはどうするか、次の瞬間にはさも最初からそれを予定したかのようにフリースタイルで言葉を並べ、ステージ上では最高にクールに振る舞ってみせる。
 失敗を曝け出せるのがステージ、完璧なんてありえないし、そんなものは必要ない。お客さんを楽しませること、その場にいる人を喜ばせられればそれでいい。そんなGOMESSのライブは常にフリースタイルで、彼の口から溢れる言葉は、その瞬間の彼の気持ちであり、宇宙にもその瞬間にしか存在しない文字通り唯一無二のものだ。だからこそ彼の言葉には想いが宿り、その重さだけ聴く者の心に届き、こびりつくのだろう。ラスト"人間失格"でマイクを通さずにシャウトしたGOMESSの言葉は、初めて彼を見た人の胸にも、きっと何かを残したはずだ。
 "人間失格"を歌い終えたところで、MC KOSHIとSANABAGUNの岩間もステージに上がり、アンコールとしてtofubeatsの"水星"に乗せて3人のフリースタイルセッションが行われた。予定調和ではないその場にしか生まれないもの、酔っぱらったり、ふざけあったり、「こんな感じがフリースタイル。」かっこ良くはないかもしれない。しかしそういうものが、時に人の心を動かし、笑顔にし、忘れられない記憶を刻むこともある。
 「今の音楽シーンは中々言いたいことが言えない、規制規制で言えない世の中だけど、今日ヤバいやつらがいたってことをちゃんと伝えていこうぜ。」岩間は最後にこう言った。その目で確かめなければわからないことが、ライブにはある。


 20150215、紛れもなくこの夜にしか生まれなかった縁をそれぞれの心に残し、『This song vol.3』の宴は幕を閉じた。

IMG_0703
















GOMESS セットリスト
1. 箱庭
2. THE MOON
3. brand new day(original by lyrical school)
4. アイドルオタクライミング with 黒柳鉄男
5. IN THE HOUSE(original by ライムベリー)
6. し
7. 一歩 ※フリースタイル
8. 人間失格
en. 水星 feat. MC KOSHI、岩間俊樹 from SANABAGUN(original by tofubeats)


文:カヲル
写真:H◉MMY



p.s ここまでお読みいただきありがとうございました! This song vol.4もお楽しみに!