tofubeats、イルリメ、オカダダ、ポチョムキン(餓鬼レンジャー)など日本のヒップホップシーンを代表するメンツが集結し作り上げたlyrical schoolの名盤「date course」。
そのプロデューサー陣を招いてリリスクが一夜限りのパーティーを開催した。

11/3(sat.) lyrical school「date course」special tour final@渋谷SOUND MUSEUM VISION

act

fragment
呂布
餓鬼レンジャー
okadada
イルリメ
tofubeats
lyrical school


会場に到着し、入場するとさっそくリリスクのメンバーがお出迎え。
来場者一人一人と丁寧に握手を交わす。アイドルシーンだけでなく音楽シーン全体的にかかせなくなってきている「接触」。やはり好きな音楽を奏でている人達と直接コミュニケーションを取れることは純粋に嬉しい。この日もメンバーとたわいもないことや今日のイベントに対する期待を話した。

すでにフロアではDJ三枚舌によるヒップホップ、アイドルを中心のプレイからfragmentがオンステージ。凶暴なビートとカオスティックな音の洪水がVISIONのローの効いたサウンドシステムに乗りフロアを支配していた。ラスト3曲では急遽駆けつけた術の穴(fragment主催のレーベル)のラッパーDOTAMAが飛び入り。辛辣ながらもユーモアも交えたラップでフロアを湧かせた。

2番手の呂布は「今日はフリースタイルなどなしで、久しぶりにセットリストを決めてやります」と宣言し、ガッツリ13曲を披露。途中、MC Koshi(リリスクマネージャー兼 DJ 兼 作詞。tengal6時代には呂布と共に楽曲制作も。)がゲストとしてラップを披露したり、DJとの掛け合いを失敗して笑いを誘う場面もあり、終止なごやかな雰囲気でライブを終えた。

3番手に登場したのは今年6月にリリスクとのツーマンも実現した餓鬼レンジャー。「我々リリスクが一番のライバルですから!」と宣言した通り「まずは空手チョップ」「火ノ粉散ラス昇龍」「MONKEY4」などリリスクを潰しにかかるかのように次々とボムを投下!中盤ではリリスクを呼び込み、ツーマン以来の「SHORT PANTS」のコラボを披露。当然フロアの温度も上昇し、そのまま投下された踊り狂える新曲「TACO DANCE」では楽しそうに踊るリリスクメンバーにつられてフロアも揺れに揺れた。最後は「俺たちの闘う場所はここだ!」と高らかに歌った新曲「STRONG ISLAND」。古い曲もたくさん披露したが、最後は新曲でバシッと盛り上がりを決めるあたり「さすが!餓鬼レンジャー!」という圧巻のライブだった。

ぐっとフロアの密集度も上がり、ステージ横のDJブースにはオカダダが登場。序盤に東京女子流の「Lair(remix)」でフロアの心をがっつり掴むと、彼の繰り出す1曲1曲ごとにフロアがどんどん熱を帯びているのが手に取るようにわかった。フロアはさながらクラブイベントのよう。
この時点で「僕はなんのイベントに来ているのだろう。」とわからなくる現象に陥った。リリカルスクールというアイドル主催のイベントに来ているはずなのだが、かわいい女の子はステージに皆無だし、空気は完全に深夜イベントだし(そういえばまだ夕方の4時だった…)、酔っぱらいも多々見られたし、こんなアイドルのリリースイベント観たことがない。だがそれは、それだけリリカルスクールの音楽がクラブカルチャーと密接したところで育まれてきた証拠なのだろう。もしかしたらこのイベント自体、リリカルスクールのバックグラウンドをヘッズに紹介したい、知って欲しいという意思の下なのかもしれない。

そんなことを考えている間に「Myかわいい日常たち」を提供し、リリスクに新しい風を吹かしたイルリメが登場。YOUR SONG IS GOODの初期の名曲「Locomotion」にラップを乗せた「イルリメのロコモーション」や東京スカパラダイスオーケストラの「美しく燃える森」のラップカヴァーを披露するなど、次々とサウンドサーフィンを乗りこなしていく。中盤の「MC & PUSHER」では最前列にいた女性リリスクヘッズをステージに上げ、ビートを叩いてもらう一幕も。機材の使い方に戸惑い、何度もミスをしてしまうヘッズをイルリメが優しくフォローしている度にまるでコントを観ているかのような可笑しさで会場の空気を非常に和やかにしてくれた。そんなムードから一転、名曲「元気でやってるかい?」「トリミング」を連続で披露。「トリミング」ではフロアに降りてラップを繰り出し、これにヘッズも大興奮。手を叩いたり、体を揺らしたり思い思いにこの時を楽しんだ。
ラストはEVISBEATSに提供した「いい時間」。このライブの締めくくりにふさわしいゆったりとした「いい時間」を作り出し、tofubeatsへバトンを繋いだ。

いよいよ終盤。tofubeatsがDJブースに降り立つ。メジャーデビューを目前に控えていることもあってかフロアから溢れる期待が半端ない。
まずはリリスクへ提供した「ひとりぼっちのラビリンス demo ver.」を投下すると、そのまま「昨日作った」と言う「ひとりぼっちのラビリンス」のリミックスを初蔵出し。まったく違う表情になった同曲だが、これがまたいい仕事でなので是非どこかで公開して欲しい。その後もオカダダを招いて新井ひとみ(東京女子流)をフューチャリングした「マジ勉NOW!」を披露したり(来年リリース予定との朗報も!)、えげつないトラックに宇多田ヒカルの「automatic」をのせたリミックスや11月16日リリースのメジャーデビューシングル「Don't Stop The Music」をプレイし、ラストはアンセム「朝が来るまで終わることのないダンスを」で熱狂に包み込みこんだ。

DJが終わり、リリスクメンバーがステージに登場。しかしトーフさんがなにやら一言。「あの、僕がなにか言ったらライブ始まるらしいんで。ayakaちゃんファンの人ごめんなさい!」そう言ったトーフさんの目にはあのでっかいサングラスが。「ドラムスプリーーーズ!!」

勢いよくリリスクメンバーが飛び出し「そりゃ夏だ!」へとなだれ込む。ボルテージのあがったメンバーとパンパンに膨れ上がったフロアから返されるレスポンスによってどんどん熱いグルーヴが作られていく。
「そりゃ夏だ!」から「wow♪」「リボンをきゅっと」「PARADE」と矢継ぎ早に曲が繋がれていく。いつからかDJ setで曲を次々に繋いでいくスタイルがリリスクに定着してきたのだけれど、やっぱり良い繋ぎだとこちらのテンションも上がるし、短い持ち時間でもたくさんの曲が聴けるし、これってヒップホップならではの面白さだなと思った。

「みなさん盛り上がってますかー!アーユーオーケー!?」とhinaがモニターに足をかけながら煽る。hinaのMCもだいぶ板についてきたなぁと微笑ましく思いながらもその勢いに負けないように割れんばかりの声を返す。
短い自己紹介を経て「続いて『dete course』からしっとりした曲をお聞き下さい。」と話し、アルバム「dete course」の核となっている失恋3部作「でも」「P.S.」「ひとりぼっちのラビリンス」を連続披露。「ひとりぼっちのラビリンス」がセットリストに組み込まれるのはこれで3度目となるだが、この日初めて振り付けを披露。振りがついたことで曲の持つ孤独感や哀愁といった世界観をより強く打ち出すことに成功していた。

静寂から一転、アルバムのskit「taxi」を想起させるノイズからあの名曲のイントロが流れるとヘッズは大合唱。こんな大きな合唱は初めて聴いたかもしれない。笑顔で飛び出してくるメンバー。キラキラした時間が会場を包む。「おいでよ」、やはりいい曲だ。この曲を歌っている時のminanの泣いているんだか笑っているんだかわからないようなくしゃっとした笑顔が非常に印象的だった。

そのまま畳み掛けるように「プチャヘンザ!」「Photograph」とアッパーチューンの応酬。4つ打ちビートにのせて会場全体も飛び跳ねる。恒例のmeiのフリースタイルでは「もらった愛 倍で返したい。掴んだマイク これで恩返し。」とあの曲の一節をぶっこんできて思わずうるっと来ずにはいられなかった。

meiが「みんな熱いねー!でもまだまだ熱くなるよー!私たちのアルバムのラストに入ってる曲があるんだけど、最後はその曲でみんなで熱くなりましょう!」と煽り、ラストチューンの「Myかわいい日常たち」へ。会場はドラムンベースの疾走感に合わせ「オイ!オイ!」と威勢良く声をあげ、ドリフのような振り付けをメンバーと共に楽しんでいる。
この時間、メンバーもヘッズも本当ににいい顔をしていた。思えば約1ヶ月半に渡るツアー。レコードショップの小さなスペースから赤坂BLITZのような大きな会場までライブをしてきた。そのほとんどのライブで披露され、たくさんの思い出と共に育ってきたこの1曲。ツアーで見た景色たちが走馬灯のように、曲と共に駆け抜けていった。

「ありがとうございました!リリカルスクールでした!」とメンバーが去っていっても興奮冷めやらぬヘッズは間髪入れずアンコールを催促。
大きな声がこだまする中、DJ岩渕がスクラッチを入れると自己紹介ラップ「tengal6」へと突入。
メンバーとヘッズが一緒に韻を踏むこの曲の盛り上がりはこの日最高潮。それだけでも最高だというのに、途中、今日の出演者達が乱入。呂布、MC Koshi、YOSHI、ポチョムキン、okadada、イルリメ、tofubeatsが次々とオリジナルのライミングを披露し(トーフさんがラストバースを『one for the party, two for the show. 3,4,5飛ばしてリリカルスクール!』と締めくくったの熱かった)、アイドルラップ史上最も豪華なマイクリレーをもって5時間に渡る盛大なパーティーに幕を降ろした。

setlist

M1.そりゃ夏だ!
M2.WOW♪
M3.リボンをきゅっと
M4.PARADE
M5.でも
M6.P.S.
M7.ひとりぼっちのラビリンス
M8.おいでよ
M9.プチャヘンザ!
M10.Photograph
M11.Myかわいい日常たち

EN1.tengal6 feat.呂布,Koshi,YOSHI,ポチョムキン,okadada,イルリメ,tofubeats

イベントが終わり、多くのヘッズが口にしていたのが「リリスク以外の出演者初めてだったけど、めちゃくちゃ楽しかった。」ということだった。確かに普通にアイドルを追いかけているだけではそうそうお目にかかれないメンツだ。彼らの主戦場は深夜のクラブであり、昼間のライブハウスがメインのアイドル界隈ではまず交わらない。その彼らの深夜イベントのパーティー感をそのまま真空パックし、普段クラブに足を運ばない層に音を届けた意義は非常に大きいと思う。昨今クラブでは傷害事件、ドラッグの密売、不純異性交遊などのイメージがまとわりつき、クラブに対して悪いイメージが少なくなく、近年では警察がクラブにガサ入れし、DJやオーナーを逮捕というきな臭い動きまである。けれど、クラブはそんな悪い世界だけじゃない。リリスクが開いたこのパーティーのように純粋に音楽を楽しむための世界やハコだってあるのだ。それを知ってもらえたこともこのイベントの大きな意味じゃないだろうか。
是非ともこのイベントを定期化させ、アイドルファンにはクラブカルチャーを、クラブ好きにはアイドルカルチャーを伝える、そんなパーティーになっていったら…と思った。

最後の挨拶では、12月にイルリメ作詞作曲によるニューシングル『わらって.net』のリリースも告知された。まだまだリリカルスクールの物語は終わりそうになさそうだ。

(文:ヤット)