●コードは『愛』だ

※ツアー、新曲に関するネタバレありなので注意。ツアー参加される方は参加後推奨。
※便宜上ツアーのアルバムを再現した前半パートを1部、通常形式だった後半のライブを2部とします。
※長いです。書いておいてなんですが時間と心に余裕のある時推奨します。



ももクロは変わったのか?

賛否両論を巻き起こした『5TH DIMENSION』ツアーと解禁された"Neo STARGATE"のPVを見た人達がその大きな方向転換に戸惑いと興奮を交えながら思い思いの感想をぶつけ合っているのを見て、大阪城ホールで行われたツアーに両日参加できた僕自身も色々思うところがあった。なので「乗るしかないこのビッグウェーブに」的ミーハー魂で僕なりに思ったことを書きたいと思う。ツアーの内容に関する描写も多く参加されてない方にはわかりづらいかもしれないですがご容赦ください。

まず1番最初にこれだけはハッキリさせておきたいのだが、ももクロはやっぱり「普通のライブ」が1番楽しい。少なくとも僕にとっては。余計な手の加えられていないライブでの、笑顔で元気でひたむきな姿が、グダグダでイチャイチャしていてまとまりのないMCが、彼女達の魅力を凝縮したももクロの『最高』だと思う。もちろん1部の前衛的な演出は時に幻想的で、幽玄的で、引き込まれるような魅力を持っていたし、それは普段のももクロのライブでは味わえないものだった。だがクールな印象だった1部と比較できたことで尚更、ももクロの"一番"の魅力は2部のような「普通のライブ」だと確信できた。それは間違いない。だから"Neo STARGATE"を見た人がアーティスト路線に変更したと感じ肩を落としたとしても、ツアーに参加した人が一部はイマイチだったと感じたとしても、それはある意味当然だと思う。僕達の期待していたももクロとは違うからだ。僕自身初日の1部を終えた時はよくわからず、「佐々木(敦規)さん帰って来てくれないかな」ぐらいのことは考えた。


だけど


もしも、ももクロが僕たちの望む「普通のライブ」"だけ"しかしなかったら、僕たちは本当にそれで幸せなのだろうか?もちろん楽しいとは思う。しばらくはそれでもいいかもしれない。でもきっとその僕たちの『最高』は、最高を繰り返す内に少しづつ磨り減っていき小さくなり、いずれなくなってしまうと思う。この先メンバーだって歳を重ねていく。もちろん飽きるなんて絶対にないっていう見方もできる。(僕はきっと"走れ!"を1000回聴いても飽きない。)ただ現に僕は大阪公演に両日参加できたが、初日を終えて2日目を迎える時「2日目はセトリ変えてくれたらいいなー」なんて事を平気で考えていた。1日だけしか来れない人が絶対にいるのに、その人達の事など頭の片隅にも置かず。もちろんそんな事を考えたのは僕だけかもしれない。両日参加できるだけでありがたいのに贅沢言うななんて全うすぎる正論だ。だが2日間参加できた人で、2日目はやる曲を変えてくれたらいいのにと思った人は、正直少なくないはずだ。

そして実際、1日目の2部と2日目の2部ではどちらの方が楽しかったか?もちろんどちらも最高に楽しかった。でも僕は絶対に初日の方が"より"楽しかったと断言できる。1日目は何も知らなかった。"ももいろパンチ"をやることも、アリーナ後方のステージにメンバーが来てくれることも。思いがけないサプライズは、待ちに待った普段のライブの興奮により一層花を添えてくれた。2日目は……全て知っていた。昨年の横アリ2日目があれだけ絶賛されたのは、1日目がオールスターズという形をとり普段とは違ったももクロだったからではないだろうか。もし2日間全く同じステージで、同じセットリストだったとしたら、最後にあんなフィナーレを迎えられただろうか。

ただ『最高』を繰り返すだけでは絶対に最高を超えることはできない。それどころかその最高は、きっと少しづつ少しづつ、僕たちが気づかない間に小さくなっていってしまうだろう。

5TH DIMEMSIONで見たももクロは確かに僕達の望んだももクロとは違う。あの前衛的な世界観とももクロのメンバーの親和性が高いかはわからない。そもそもももクロにカッコいいなんて求めてないという人もいるだろう。成長物語を楽しみたいならエビ中やしゃちほこやたこ虹の方がいいのかもしれない。クールなももクロと元気なももクロでは間違いなく後者の方がファンはより楽しめる。そしてその事をメンバーと運営も知っている。初日2部の最初のMCでファンに「大丈夫でしたか?わかりましたか?わからないですよね…」と恐る恐る聞くメンバーは誰よりも不安だったはずだ。

じゃあそんな1部はやるだけ無駄だったのか?みんなの望む普通のライブだけやれば良かったのか?きっとそれは違う。"Neo STARGATE"や"BIRTH Ø BIRTH"のダブステップを取り入れたEDMは今までのももクロでは考えられなかった楽曲だが、レーザービームの特効もハマり従来のイメージを覆す「カッコいいももクロ」を見せつけていた。またファンはステージを一切見ずに踊り狂ってもいい。特に"BIRTH Ø BIRTH"は客席を一瞬でフロアに変えられるポテンシャルを秘めている。"5TH POWER"はオールドスクールなHIPHOPでコールや振りコピは一切不要。サビでは皆が肩を揺らしながらハンドクラップを響かせる。"宙飛ぶ!お座敷列車"はコミカルな駅員のアナウンスと列車を模したカワイイ振り付けが特徴で子供も一緒になって楽しめる曲だ。うりゃおいする必要はない。

今回のツアーは非常にコンセプチュアルなもので『宇宙や異空間』といったシリアスな世界観でまとめられておりMCは一切ない。マスクでメンバーの表情もよく見えない。しかしそれは「シリアスなももクロ=誰も見た事のないももクロ」を新しく見つけるための挑戦だ。またアルバムも曲ごとに見れば、これからのももクロのライブに新しい一面をもたらせるものばかりだ。(個人的には"BIRTH Ø BIRTH"のようなSkrillex顔負けのブロステップを取り入れた超攻撃的EDMがこれからのレパートリーに加わるのは大歓迎だ。)本題はむしろこのツアーが終わった後、アルバムの曲達と「シリアスなももクロ」がどういう形で「普段のライブ」に混ざり新しいももクロを作っていくかではないだろうか。そして全てが混ざりあった時、今までの「最高」を超える『最高』が待っているかもしれないじゃないか。

僕達ファンは気づくべきだ。僕達の思い描くももクロだけがももクロではないということを。コールを叫んでペンライトを振るだけがライブの楽しみ方ではないということを。極端な例えだが"怪盗少女"と"白い風"のどちらの方がライブで聴きたいだろうか。僕は正直に言えば"怪盗少女"だ。問答無用のアンセム。絶対盛り上がる。でももし"怪盗少女"しかやらなかったら、"白い風"のメンバー全員のソロパートの歌唱力の上達に、伸びに、情感を込めて歌い上げる様に、最後のサビに入る前の有安杏果のボーカルの圧倒的な力強さとエモーショナルに気づくことは一生できない。他の曲だってその曲ごとにそれぞれ"怪盗少女"にはない違った良さを持っている。当たり前だ。

一部で批判のある5次元バンドだってそうだろう。拍手とハンドクラップができるようになった。"灰とダイヤモンド"でメンバーが光の中に消えていくシーンは5次元バンドが作り出した『闇』の中だからこそ活きた演出だったのではないか。ずっと明るいペンライトが点きっぱなしでは邪魔にならなかったか。5次元バンドがあったからこそペンライトを点けた時、いつも以上に気持ちが入ったのではないか。もちろん5次元バンドにもデメリットはある。(初日僕の5次元バンドは一つ目は壊れてずっと光りっぱなし、交換された二つ目は一切光らなかった。こんな事でも実際自分の身に起こるとちょっととはいえ気持ちは落ちる。)
しかし僕達がすべきは「5次元バンドよりペンライトの方が良い」と比べる事ではなく、5次元バンドでしか味わえない世界を楽しむことのはずだ。

僕達の期待する"ももクロ"だけを押し付けて彼女達の可能性を閉ざしてしまうのは余りにもったいない。そしてそれは彼女達の可能性を狭めるだけでなく、僕達自身の可能性をも狭めることになるのだから。実際僕は2日目の1部は前日にどのようなものだったかわかっていたため、ライブに向かう気持ちを変えていた。「他の誰よりも早く新曲が聴けるんだし、新曲を楽しもう」と。そしてそういう気持ちで臨んだ2日目の1部は、もちろんメンバー自身が前日とは変わり客席を煽ってくれたりファンの方も両日参加の人が楽しもう盛り上げようとしていたこともあるが、「ガッツリライブを楽しむぞ!」と鼻息荒くしていた初日よりも遥かに楽しめた。僕たちが勝手に作り上げたイメージが、目の前のそこにしかない良さを覆ってしまう時があることを、僕たちファンは知っておくべきだ。

日経エンタテイメントの連載でマネージャーの川上氏は「アーティスト性とエンターテイメント性の"両立"を目指す」と言っていた。今回Perfumeを引き合いに出しももクロがアーティスト路線に走ったという人がいるがそれは違う。従来のエンターテイメント性を捨て去ることなくアーティスト性をも獲得し、その2つを融合させようとももクロはしているのだ。アーティスト路線だけに振り切れる訳ではない。それこそももクロには似合わないだろう。現時点ではアーティスト性の1部、エンターテイメント性の2部と完全に分断してライブを行ってるが、いずれこの2つが一本の線の上で交わっていくのではと思っている。もちろんももクロが色々なことに手を出す事に否定的な人もいる。一つの事を突き詰めた先にしかないものは必ずある。そんなももクロは好きじゃないと。"カッコいいももクロ"をカッコいいと思えない人もいると思う。(路線変更という考えを度外視した上で純粋に新曲をカッコいいと思うか思わないか。)ももクロには似合わないかもしれない。ダブステップが聴きたいならももクロじゃなくてちゃんとテクノやエレクトロをやってる人の音楽を聴けばいいのかもしれない。でも僕は、ももクロにしかできないことがあると思う。

ここからは僕の願望であり妄想だ。

ももクロはこれまで多くの壁を乗り越えてきた。ひたむきなパフォーマンスで見る人の心を掴み、音楽的にも従来のアイドルソングの枠を壊し、プロレスファンやロックファンなどを中心に今までアイドルに興味を持たなかった層をアイドルに夢中にさせた。そしてその名は紅白出場を果たした今、日本中に広がろうとしている。今のももクロのライブには初期のアイドルファンから中期のサブカルファン、そしてそれ以降の一般層まで、老若男女、親子連れを問わず文字通り幅広い層のファンがやってくる。

僕はももクロが様々な事にチャレンジするのがこの広がったファンのニーズの全てに応えるためという消極的理由からではないと考える。一つは最初に述べたように最高を繰り返すだけでは最高は擦り切れてしまうから。そして二つ目は


まだ見たことのない景色がその先にあるからだ。



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ずっと繰り返された
争いとか苦しみとか 全て
人が犯した罪だ
災いさえ 星の教え だけど

僕たちはもう意識を清め 
手と手を繋ぎ生きていける

開けたパンドラの箱は 
二度と閉じることはないさ 
だから
人が築くしかない
僕らはみんな一つだから 
そうだ 

光はいつも闇より強い 
愛より強い力はない

もっと先へ 先へ

"Neo STARGATE"

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ももクロのライブには年齢も性別も好きな音楽も抱えたバックグラウンドも違う沢山の人が訪れる。ただ全員に共通する事がある。それは大なり小なり差はあれど、『ももクロが好き』という単純で純粋な気持ちだ。そしてファンはももクロというアイドルを通じて、プロレスやロックや相撲やダブステップやHIPHOPやコントやプログレやラジオドラマやフォークや演歌など、自分の知らなかった世界に出会う。僕達にまだ知らない世界の素晴らしさを教えてくれる。

そんな必要があるのか?と聞かれたら、わからない。「人それぞれ」という言葉で棲み分けし、お互い干渉し合わなければ確かに傷つかないもしれない。でも僕は、ジャンルも、分野も、世代も、超えて,皆が一緒に笑い合える方が素晴らしい世界な気がしてならない。そしてそれらのジャンルと人を超えるのは彼女達の純粋さ・ひたむきさ・健気さであり、与えられた状況に全力で取り組む姿勢、彼女達自身が持つ魅力に他ならない。それは全く違う場所から来たはずの僕達の気持ちを同じように打つ、誠実で真っ直ぐなものだ。「そんな彼女達が好きだ」という気持ちで、僕達は繋がり合うことが出来るかもしれない。


『コードは愛だ』


僕達が変わるように彼女たちだって変わる。成長する。大人になる。どれだけ変わらない事を願っても時間は止められない。ネバーランドは存在しない。でも変化する事が、必ずしも何かを失う事を意味するわけじゃない。少なくとも僕が初めてももクロを見た時彼女達に見た輝きは、今も失われていない。ステージの上で歌い踊る彼女達は今だって、弾けるほどに眩しい。

ももクロは変わったのか?

ももクロは変わった。
そしてこれからも変わり続けるだろう。

でも、変わらない。

彼女達の変わらない輝きが、人と人とを、壁を超えて繋ぐ。
誰一人同じじゃない僕達が一つだけ持ち寄る同じ気持ち。
「好きだ」という気持ちが僕達を繋ぐ。
わかりあえない僕達がわかりあえる。


その世界こそが5次元だ。


もちろん未来がどうなるかは誰にもわからない。こんな僕の理想論は煙たがられ、ももクロは僕の予想とは全く違う場所を目指すかもしれない。でもどこに辿り着くとしても、その時はこの目で確かめたい。


彼女達の笑顔はきっと変わらないでいてくれると信じているから。











p.s. 西武ドームのチケット探しています。余らせている方はご一報頂けるととてもうれしいです。

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ただ今まで散々色んなこと偉そうに言っておいてアレですけど、上に書いた事はどうでも良くて、ただメンバーが幸せそうにしてくれていたらそれだけで十分なんです。可愛かったらいいんです。メンバーがイチャイチャしてくれてたらいいんです。それだけでこっちは元気になれるんです。アイドルを好きでいるのに大層な理由なんていらないんです。


イチャイチャよ永遠であれ。




カヲル